認知症の人が徘徊して行方不明になってしまった時の探し方
認知症患者の行方不明者は3年連続で年間1万人を超えています。
超高齢化社会であることを考えると今後も年々増加傾向にあるといえるでしょう。
その中には行方不明から発見されても、身元がわからないまま何年も施設で保護されている方もいらっしゃいます。
万が一、身内の方が行方不明になってしまったら・・・
きっと居ても立ってもいられないですよね。
大切なご家族ですから発見されるまで生きた心地がしないと思います。
行方不明の捜索は一刻を争うものです。
この記事では、もし身内の方が行方不明になってしまった時にご家族が出来る対処法をステップごとにご説明します。
STEP1:家族だけでは捜索しない!早めに警察へ通報を
まず家の中や周辺を20分ほど捜索しても見つからなかった場合、すみやかに警察へ110番通報してください。
警察へ通報するのは気が引けてしまう…と、思ってしまうかもしれませんが、行方不明は一刻を争う事態です。
この20分と区切るのがポイントで、あらかじめ時間を決めておくことで警察へ通報するタイミングを見失わないですみます。
家族のことなので迷惑をかけたくない、すぐ見つかったら恥ずかしいなどと遠慮してしまい、通報が遅れてしまうことがとても多いのです。
朝に行方不明が発覚して家族だけで捜索を続けても見つからず、結局夕方になってやっと警察へ通報したという話はよく聞かれます。
しかし、行方不明の捜索の場合、通報の遅れがそのまま生存率に関わってきます。
発見された時にはすでに亡くなっていて、もうちょっと早くに通報していれば…と後悔されているご家族の方は実際にいらっしゃいます。
とりあえず家族だけで1、2時間探してから…では遅いのです。
警察への通報が遅れる理由
認知症の人がいらっしゃるご家族にとったあるアンケート結果によりますと、警察や周囲に協力をもとめることにためらいがあると答えた人は70%を上回っています。
多くの人が周囲に助けをもとめられずに家族だけでなんとかしようと思ってしまっているのです。
さらに、通報が遅れるもう一つの理由として、行方不明になることを想定していなかったことがあげられます。
ちょっと意外ですよね。
認知症で行方不明になってしまった方は日常的に徘徊の症状があると思っていませんか?
しかし、実際に行方不明になってしまった方のご家族にお話を聞くと、「まさか行方不明になるとは思わなかった」と行方不明を想定していなかった方が非常に多いんです。
- 軽度の認知症だから
- 今まで徘徊の症状は出ていなかったから
- そもそも認知症じゃないから
など、そもそも徘徊してしまうことさえ予想外だった場合が多いことがわかります。
うちのおじいちゃん・おばあちゃんは大丈夫と思っていたところにいきなり行方不明になってしまうのですから、ご家族の方も冷静でいることなんて出来ないですよね。
しかし、朝日新聞の調査によりますと、認知症による徘徊が原因で行方不明になり亡くなった人の4割程度が「程度の軽い認知症」だったといいます。
行方不明になって初めて認知症だったことに気付いたというケースもありますので、行方不明は誰にでも起こり得ることなのだという意識を持っておくことが大切です。
STEP2:関係各所に連絡をしましょう
地域に徘徊SOSネットワークなどの見守り事業がない場合は、ご家族が周囲へ協力を仰がなければなりません。
捜索の協力者や人の目は多ければ多いほど良いのです。
徘徊SOSネットワークとは、住民や地域のお店や団体などその地域全体で高齢の認知症患者を見守り、捜索を行う繋がりのことです。
こちらの記事「もしもの行方不明の備えに!地域で支えあう徘徊SOSネットワークを活用しよう」でより詳しく説明しています!
地域に協力を求める場合の連絡先
- ケアマネージャー
- 地域包括支援センター
- 公共交通機関(電車やタクシー、バスなど)
- 消防団
- 自治会・町内会
まずは担当のケアマネージャーがいる場合は相談してください。
ケアマネージャーは介護の専門家ですので、関係各所に連絡してくれたりアドバイスをもらえるかもしれません。
さらに自治体の窓口にも連絡をします。
地域包括支援センターがその役割を担っていることが多いので、普段からいざという時の連絡先としてすぐに連絡できるようにしておきましょう。
市町村によっては無線放送を使って行方不明者の呼びかけをしてくれる所もあります。
連絡する際には行方不明になった人の見た目の特徴などをあわせて伝えましょう。
氏名、身長、行方不明時に着ていた服装、髪型、体型などを伝えるとよりスムーズに捜索が行えます。
STEP3:捜索
警察や関係各所へ通報したら、ご家族でも捜索を行うと思います。
認知症の人を探す場合ただ闇雲に探すより、以下の2点をポイントに捜索をしてみることをおすすめします。
- なじみのある場所を探す
- まさかと思う場所を探す
なじみのある場所を探す
徘徊の目的によっては、認知症の人にとってなじみのある場所へ行こうとしている場合が考えられます。
- よく散歩をする公園
- いつも買い物へ行っているスーパー
- 住み慣れた実家
- 友達や親戚の家
など、心当たりのある場所を探します。
普段一緒に住んでいなくて分からない方は、ケアマネージャーやご近所の人などに聞いてみてください。
まさかと思う場所を探す
発見された場所として最も多いのは「路上」なのですが、まさかこんなところで?
と思う場所で発見されたケースもあります。
例えば・・・
- 自宅の押入れの中
- 側溝の中で倒れていた
- 自宅の裏側の塀と塀の間から出られなくなっていた
- 近所の人の庭に入り込んでいた
こんなところに人が入るのか?と思うようなところで発見されています。
何故このようなことが起こるのかといいますと、認知症によって問題解決能力が低下し、迷っているうちに入り込んでしまったところから出られなくなったことが考えられます。
行方不明の末、亡くなった人のうち59%が自宅から1キロ以内の近い場所で発見されたというデータもありますので、自宅の周辺を丁寧に捜索することも一つの方法です。
STEP4:発見されたらまずは健康状態を確認
多くの認知症の方は行方不明になった当日に無事に発見・保護されています。
しかし、発見されたからといって安心せず、まずは認知症の人の健康状態を確認してください。
季節によっては熱中症や脱水状態に陥っている可能性が考えられます。
市町村によっては徘徊SOSネットワークの一環で発見後に医師による健康チェックを行っているところもありますので、ケアマネージャーや地域包括支援センターと相談し健康状態を診てもらいましょう。
STEP5:教訓を生かし次に備える
徘徊は何度も起こる可能性があります。
今回行方不明に至った経緯をまとめてケアマネージャーや地域包括支援センターと共有し、教訓として次に生かせるようにします。
一人で考えこまず専門家に相談しながら対処法を探りましょう。
具体的には以下のようなことについて振り返ります。
- 行方不明になった時の状況について
- 発見された場所について
- 認知症の人の状態について
- 探す手順について など
振り返ることで、今後どういう対応をとるべきか、また行方不明になった場合にどのように行動するべきか、と今後の参考になります。
まとめ
認知症の人が行方不明になった時のステップ別の対処法をご紹介いたしました。
認知症の人の命を守るために、とにかく迅速な対応を心がけましょう。
通報したり周囲に助けを求めることは決して恥ずかしいことではありません。
そして、捜索は周りの人の手を借りましょう。
警察はもちろん、ケアマネージャー、地域の徘徊SOSネットワーク、自治会や町内会など、協力をしてくださる方はたくさんいます。
決してあなたは一人じゃありません!
最後に、行方不明になって発見された時に認知症の人を叱ったりしないでください。
「迷惑をかけて!」「なんでこんなことをしたの!」と思わず怒鳴ってしまうと、さらに症状が悪化する可能性があります…!
認知症の人もその人なりに目的があって行動した結果です。
ご家族の方は認知症の人の心に寄り添うよう意識して接することが、徘徊の対応として一番大切なことなのです。