もしもの行方不明の備えに!地域で支えあう徘徊SOSネットワークを活用しよう

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もしもの行方不明の備えに!地域で支えあう徘徊SOSネットワークを活用しよう

現在では高齢者の約4人に一人が認知症の人またはその予備軍といわれています。
認知症の患者数は高齢化とともに年々増え続け、厚生労働省の調査によると2020年には292万人にまで達すると予想されています。
それを受け国をあげて認知症の人にやさしい環境づくりが進められ、地域密着型の介護サービスや地域による認知症への取り組みが増えてきているのです。

今回はその取り組みの中でも、ご家族の徘徊症状でお悩みの方は必ず!知っていて欲しい「徘徊SOSネットワーク」についてご説明していきます!

地域で支えあう徘徊SOSネットワークとは?

地域で支え合う

徘徊SOSネットワークとは、高齢者が行方不明になった時に地域の住民や団体が捜索に協力して、すばやい発見や保護をするための仕組みのことをいいます。
見守りSOSネットワークとも呼ばれたりします。
行方不明時の捜索以外にも、徘徊する心配があったら高齢者への見守りや声かけなどを積極的に行い、事前に徘徊に気付けるような役割も担っています。

徘徊SOSネットワークの目的は大きく以下の3つになります。

  • 情報共有の手続きを簡単にして警察へ行方不明者の情報をまとめることで、徘徊している人をすみやかに保護する
  • 認知症の人やそのご家族への支援をおこない、適切な医療や福祉サービスを紹介し再発を防ぐ
  • 地域全体で取り組むことで認知症への理解を深め、認知症の人が住みやすい地域づくりをする

徘徊SOSのネットワークは、こちらの記事「一人で抱え込まないで!徘徊が始まったら頼るべき認知症カフェについて」で紹介した、国による新オレンジプラン4つ目の柱「認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進」の具体的な施策のひとつでもあります。

徘徊SOSネットワークは各地方自治体が主体となって取り組みがされている事業ですので、地域によって名称が異なったり仕組みが若干異なっています。

徘徊SOSネットワークの仕組みについて

そうはいっても実際行方不明になってしまったら、どういう風に動いてくれるの?
と、疑問に感じますよね。

そこで、徘徊SOSネットワークの仕組みをイラストと実際の流れに合わせてご紹介します!

認知症の人の行方不明が発覚した場合、徘徊SOSネットワークは以下のような流れで捜索にあたります。

行方不明になってしまった時の徘徊SOSネットワークの流れ

徘徊SOSネットワークの流れ

  1. ご家族は警察へ通報します。
  2. 警察(または地域の自治体)から一斉に各協力団体へ連絡し、行方不明者の情報を共有します。
  3. 警察は捜索を開始し、各協力団体は共有された情報を元に行方不明者の人を見かけたらすぐに警察へ連絡します。
  4. 各協力団体や協力者からの情報提供を受けながら捜索し、発見したら保護します。(必要に応じて医療機関で健康状態を確認します)
  5. 各協力団体にも発見の連絡がいき、捜索が終了します。

徘徊SOSネットワークのようなシステムがある前は、ご家族と警察の方のみで捜索にあたっていたのでどうしても時間がかかってしまいました。
近所にいるだろうと高をくくっていたら、何キロも離れた先まで移動してしまっていた!なんてことは本当によくある話です。

そして発見が遅れれば遅れるほど亡くなってしまったり事故に合う確率は増えてしまいます。
当日の発見では生存率は8割を超えますが、5日目以降の生存者はいなかったというデータもあります。
特に気温による消耗が激しい夏や凍死の恐れもある冬場は一刻も早い発見がのぞまれます。

こうしたことをふまえて、地域全体で見守り迅速な発見へと繋げる徘徊SOSネットワークは、年々需要が高まり積極的に取り組んでいる地域も増えてきました。

協力者として地域住民へも参加を呼びかけている地域もあります。
その場合、協力者の元へ行方不明者についての情報がメールで届くので、より多くの人が捜索に協力することができます。

ご家族の方も地域全体で捜索する仕組みがあるのはとても心強いですよね!

協力団体について

徘徊SOSネットワークに参加している協力団体は地域によって異なりますが、大きくわけて4種類の団体が捜索に協力しています。
警察から共有された情報を元に行方不明者に似ている人を見かけたらお声がけしたり、すぐに警察へ連絡できるような体制になっています。
こういった各協力団体と迅速な連携が出来るように、定期的に模擬訓練などを行っている市町村もあります。

生活関連企業


地元のタクシーやバス会社
コンビニ
放送局
郵便局
ガソリンスタンド
など

医療・介護のプロ

介護サービス事業者
病院
ケアマネージャー
など

自治体

市町村役場
地域包括支援センター

住民

地域の協力員
(協力サポーターやSOSネットワーク会員など地域によって呼び名が異なります)

徘徊SOSネットワークには医療期間や介護施設などが関わっている場合が多く、無事に保護されたあとは再発しないように、ご家族が認知症に対する介護の仕方や徘徊についてのアドバイスなどを受けることも出来ます。

徘徊SOSネットワークの利用の仕方

では、実際に徘徊SOSネットワークを利用したい場合はどうすればいいか説明していきます。

ステップ(1)まずは住んでいる地域の徘徊SOSネットワークを調べよう

徘徊SOSネットワークについて問い合わせ

徘徊SOSネットワークは全国の各市町村で積極的に取り組みが行われていますので、まずはお住いの地域で徘徊SOSネットワークという仕組みがあるか最寄りの地域包括支援センターか自治体の介護窓口へ問い合わせてみてください。

もしどの窓口へ問い合わせすればいいか分からない方は、下記のページでお住いの介護に関する窓口を確認することができますので探してみてくださいね。

参考リンク:地域窓口

ステップ(2)認知症の人の情報を事前登録をしよう

ご家族に認知症の人がいらっしゃって徘徊の心配がある場合、徘徊SOSネットワークへの事前登録を行いましょう。

ステップ(1)でお問い合わせした窓口で事前登録を受け付けているので、指定の書類に必要事項などを記入して提出します。市町村によっては登録する認知症の人の顔写真を提出する場合もあります。

「うちは認知症だけど軽度だし、徘徊の心配はないから大丈夫」なんて油断するのは禁物です。
軽度でも徘徊が起こる場合もありますし、いつの間にか症状が進んで突然徘徊が始まってしまうこともありますので、認知症の診断をうけたら事前登録をしておくのをおすすめします。
自治体によっては事前登録を行うことで靴などに貼れる反射シールなど、徘徊してしまう認知症の人に役立つグッズを配布しているところもあります。

もちろん徘徊SOSネットワークの利用や登録は無料ですのでご安心ください。
また、事前登録をする前に行方不明になってしまっても徘徊SOSネットワークは利用することができます。

ステップ(3)ご家族の行方不明が発覚したら警察へ通報を!

事前登録をすませたら、あとは必要な作業はありません。
万が一行方不明になってしまった場合は介護者の方は速やかに警察へ捜索願いを出してください。

各協力団体への情報共有などは警察(または自治体)が行いますので、徘徊SOSネットワークを使うために介護者の方でやらなければいけないことはないのでご安心ください。

徘徊SOSネットワークの実例

徘徊SOSネットワークは実際にどのように取り組まれているのでしょうか。
徘徊SOSネットワークに積極的に取り組んでいる自治体の事例をご紹介します。

【市全体で取り組む模擬訓練】福岡県大牟田市ほっと安心(徘徊)ネットワーク

福岡県大牟田市は人口の約12万人のうち65歳異常の割合が33.4%と、全国平均の26.7%と比べるとかなり高齢化が進んでいるといえます。

2003年に認知症の高齢者が徘徊から行方不明になったのち死亡してしまったのがきっかけで、翌年2004年からSOSネットワークの取り組みが始まりました。

大牟田市の「ほっと安心(徘徊)ネットワーク」では、目的のひとつに以下を掲げています。

認知症になっても安心して暮らせるために
「徘徊=ノー」ではなく、「安心して徘徊できる町」を目指していく

引用:大牟田市の取り組み

徘徊をなくすのではなく徘徊しても大丈夫な町づくりを実現するにあたって、住人の認知症への理解を深めることから始まりました。
大牟田市のほっと安心ネットワークは、学区ごとに事前準備や取り組みを行っており、年に一度の模擬訓練では各学区一斉に模擬訓練を行っています。
最初は一部の学区のみで行われていましたが、2010年までに市内の全ての学区で徘徊模擬訓練の取り込みが行われているようです。

模擬訓練は、実際に徘徊役の人を決め警察へ捜索願が出されたことを想定して行います。
警察は市役所へ連絡し、連絡を受けた市役所は介護事業所・医療機関へ連絡します。同時に民生委員・児童委員の方へFAXで情報を配信、協力者にはメールで配信します。

その後、各学区の拠点より情報連絡網を活用して情報伝達します。情報は「はやく・正確に・末端まで」を目標に伝達が行われます。
そして実際に各学区にて捜索・声掛け訓練が行われます。学区によって声かけに重点をおいたり、捜索に力を入れたりと工夫されています。
訓練後は次回の模擬訓練に向けて各学区で反省会を行い、模擬訓練を振り返ります。

市内の全学区で模擬訓練を行うことで、高齢の認知症の人に対する理解が深まり、道端の人に声をかけることへの抵抗も減っているとの意見もあります。
また、模擬訓練開催10年目には市内の高校生へも参加を呼びかけ、世代を越えた認知症の人による徘徊への取り組みが行われています。参加者は年々増え、2013年には2000人を越えたというのですから驚きです。

大牟田市のほっと安心ネットワークは実際に成果をあげており、行方不明から発見・保護された件数が2010年から2012年にかけて約1.5倍にまで増加しているのです。

まとめ

徘徊の対策をしよう

徘徊SOSネットワークについてご説明しましたがいかがでしたでしょうか?
まだまだ徘徊SOSネットワークへの取り組みは全国に浸透しているとはいえません。
ただ、市民の声がきっかけで徘徊SOSネットワークに取り組んだという自治体もありますので、介護者の方は自分のお住いの地域が認知症に対してどういった取り組みを行っているか知っておくことをオススメします。

介護職員の私から伝えたいのは、認知症の介護はご家族だけでなく地域全体でサポートする必要がある病気だということです。
特に高齢の認知症の人が徘徊によって外を出歩くというのは、命の危険にも関わります。
徘徊の対策は、「事前の予防」と「万が一起きてしまった場合の対策」どちらも行うことが大切です。

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